うちの近所に、一匹の野良猫がいる。黒と白のツートンカラーで、まるでタキシードを着ているみたいだから、ボクは勝手に「紳士」って呼んでるんだ。
彼はいつも路地裏のブロック塀の上で、気品たっぷりに香箱座りをしている。だけど、彼がただの猫じゃないってことに気づいたのは、ある雨の日のことだった。

びしょ濡れになったボクが軒下で雨宿りしていると、紳士がどこからか一枚の大きな葉っぱをくわえてきて、ボクの足元にそっと置いたんだ。まるで「これを傘代わりにどうぞ」って言っているみたいに。
それ以来、ボクは紳士を見かけるたびに、心の中でそっとお礼を言うことにしてる。言葉は通じなくても、優しい気持ちは伝わるんだなって、彼が教えてくれたんだ。
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